すべてボランティアで運営される、
究極のボーダレスサウナ
Sompasauna
(フィンランド / ヘルシンキ)
サウナーの皆さん、こんにちは!
サウナライターのいしかわゆきです。
2カ月間にわたるヨーロッパ旅行のなかで巡ったサウナたちをご紹介していく本連載。
前回は、 フィンランド最古のサウナ「Rajaportin Sauna」をレポートしました。
再びヘルシンキに戻り、フィンランド滞在最終日に訪れたのは「Sompasauna」(ソンパサウナ)。
最新施設である「Löyly Helsinki」とは打って変わって、こちらは近隣住民によって、ボランティアで運営されている超絶ローカルなサウナです。
前回「Rajaportin Sauna」を一緒に巡った、ヘルシンキ在住のおじいちゃんから「ここが僕のホームサウナなんだ!」と推されたこともあり、絶対に行かねばと思っていた場所です。
最大の特徴は、「男女問わず、ネイキッド(裸)で入るのがスタンダード」という、日本では考えられないようなオープンさ。
だからこそ、さすがにカメラを構えるのは憚られたので、ここからは公式サイトから写真をお借りしてお送りしたいと思います。
まず、この「Sompasauna」(ソンパサウナ)、ちょっぴり辺鄙なところにあります。
カラサタマ駅(Kalasatama)から歩くこと15分。
「ほんまにここで合ってるんか?」とタオル片手に怯えながらやって来ました。
出迎えてくれたのは、こちらのファンシーなキリンの像。ここら一帯だけ都会のオアシス感がすごいです。ちょっと歩けば普通に道路なのに、「Sompasauna」のまわりだけは木々が生い茂り、湖が広がっている。異質な雰囲気に、いろんな意味で胸が高鳴るわ……。
「Sompasauna」はボランティア運営なので、特に入場料はありませんが、寄付ができるQRコードが貼ってあります。さらに、サウナも全部近隣住民たちの手作りときた。だからこそ、更衣室などもなく、開放的な青空のもとで衣類を脱いでいきます。
もちろんロッカーもないので、そこは利用者の民度を信じるしかない。iPhoneを置くのはちょっと怖かったけれど、衣類でぐるりと巻いておきました。
ふと横を見ると、みんな思い思いに寛いでいる様子。この写真ではみんな水着を着ていますが、あくまでスタンダードは裸なので、わたしが訪れたときは圧倒的に全裸の人が多かったですね。
それをいとも気にせず、「やぁ! 君は日本から来たのかい?」と普通に声をかけられるものだから、最初のうちはどぎまぎしてしまいました。
まわりを見渡してみると、たしかにひとりで来ているアジア人はわたしだけ。それに気付いた瞬間、一気にローカルみを感じてテンションが爆上がりしました。これぞ旅という感じがするわ……!
「郷に入っては郷に従え」とは言うものの、ナイスバディのお姉さまたちの前で貧相な身体を晒す勇気は出ず、水着を着用しての参戦です。次は鍛えて出直してくる。
「Sompasauna」には、広場のような空間に、こんな感じの手作り感のあるサウナが3つ立ち並んでいます。カラフルなペイントも相まって、ちょっとしたお祭り感がありますね。実際に、定期的にフェスも開催されているようです。
サウナはどれもぎゅうぎゅうに詰めて8人ぐらいが限界。サウナのサイズ感に対して、訪れる人が多いのと、さすが地元の人は耐久力が鬼強で、ゆっくりサウナを楽しむので、ドアの小窓から覗いて混み具合を確認していました。
ちなみにひとつだけ、信じられないぐらい熱いサウナがあって、屈強なおじさんが1人で延々とロウリュをしていました。わたしの滞在時間は5秒。後にも先にも、あんな熱いサウナは初めてだった。我こそは、という人はぜひトライしてみてほしい。多分無理。
この至近距離のなか、向かい合って入るサウナってちょっと新鮮ですよね。バレルサウナみがある。
そういえば、フィンランドのサウナはお話がしやすいように設計されているのが印象的でした。
日本のような階段スタイルは逆に珍しいかもしれない。いい意味でパーソナルスペースがゼロなんです。
そしてこんなにもスモールサイズなのに、容赦無くガンガン薪がくべられていくので、ものすごく熱い!!!!!(笑)
ここでは、ストーブの管理も利用者のボランティアによってされています。
みんなでちっちゃな小屋にこもって汗を流している感じが不思議でした。しかも8割は全裸なので、何となく目のやり場に困りながらサウナストーブの炎のゆらめきを眺めていました。隣の人に「大丈夫? 熱くない?」と心配されつつ、限界まで温まったところで、いざ湖へ!
フィンランドに来てから、すっかり湖でととのうことが病みつきになってしまいました。勢いよく飛び込んでも、底に足がつかない感じがいい。少しぎこちなく泳ぎながら、広大な空を眺めます。足に絡みつく藻さえも、雄大な自然を感じられていい感じです。
湖のなかでは、サウナ内で出会ったノルウェーの方が声をかけてくれて、「わたしもこれからノルウェーに行くんだよ~」と話したり。
湖のほとりにある岩に腰掛けて、ありのままの姿でスイスイと泳ぐ人たちを見て、ここでは、性別も、人種も、国境もすべてが溶け合って、ただただみんながサウナを楽しんでいるんだな、と思いました。ボーダレスとはまさにこのこと。
そして、そんなボーダレスな空間に魅せられた人々が集い、こうしてボランティアだけで成り立っていることの尊さたるや。
そんな奇跡を目の当たりにできた公衆サウナでした。次回は夜に訪れたい。開放的な姿で。
いしかわゆき
サウナと温泉と旅をこよなく愛するライター。
好きなサウナは地方にある広々灼熱サウナ。
好きな水風呂は深くてキンキン天然水。
好きな温泉はpH9以上の強アルカリ性温泉。