医者が教える
〝ととのう〞の正体とサウナの効果
空前のサウナ・ブームの昨今。
医者の立場からサウナを科学し、発信している加藤容崇氏に、サウナの健康的効果、〝ととのった〞とき、人の体はどんな状態になっているのか?
どのような入り方が〝ととのい〞やすいのか?
など、医師ならではサウナに関する見解を伺う集中連載。
最終回は加藤先生が推奨する「サウナの入り方」について。
正しいサウナの入り方を教えてください。
正しいと言うか、私が推奨する入り方は、入る時間を何分と決めません。
体質やその日のコンディションもありますし、時間だけでは決められません。推奨するのは脈拍数で測ることです。
サウナ室に我慢して長時間いたほうが、〝ととのう〞のではないか? みたい考えで、入る時間がどんどん長くなっている傾向がありますが、それは間違っています。
目安は、軽い運動したときぐらいの自分の脈拍数を覚えておいて、その脈拍数になったらサウナ室から出ます。
水風呂は、1分から1分半ぐらい。体の血液が一巡する時間です。
喉がスースーしてくると思うんですけど、これがちょうど血液が一周してきたというサインです。
簡単に説明すると、皮膚の表面は先に冷えていきますが、血液は冷たい空気と暖かい空気を循環していきます。
一周だけだと体の内部は、まだそれほど冷えませんので、肺の奥から出てくる呼吸は、すごく熱いんですね。その熱い空気と、冷えた喉の表面の空気の温度差でスースーするわけです。ちょうどそのスースーを感じ始めたぐらいが出るタイミングです。
外気浴は体が落ち着いてきたら、ちょっと長めにとるのがコツですね。
時間的にいうと5分から10分くらい。少なくともサウナ室にいる時間と同じぐらいか、それ以上の方がいいです。
サウナに入るときは、手で脈拍数をカウントしながら、ということですね!
そうですね。脈拍数を数えるのが面倒なら、自分の好みの歌ってあると思うんですが、それのBPMを覚えておくといいですよ。
私の場合、小走りにすると120回ぐらいの脈拍数になるんですが、120BPMって色々な曲があるんですよ、 TUBEの『シーズン・イン・ザ・サン』だとか。
120BPMの歌を覚えておいて、頭の中で歌ってみて、脈拍数とその曲のリズムが合ってきたら出るっていう感じですね。
脈拍数が上がるのは、人によって違いますよね? つまり、各々によってサウナ室にいる時間も変わってくるということですか?
もちろんです。
元々、脈拍数って人によって大きく違います。運動している人だったら平常時、30〜40という人もいます。
運動しなくても、元々脈拍が早い人は100回の人もいます。ですので、その人なりのちょっと小走り、あまり辛くない運動の時の脈拍数を把握しておくのがポイントだと思います。
時間でいうと、どのくらいなんでしょうか?
大体6〜7分、5分から10分ぐらいの間でいいと思います。厳密に考えれば、ちゃんと脈拍数を計りながら出ると、安定して〝ととのう〞と思うんですよね。
サウナ初心者には、冷たい水風呂に抵抗がある人もいると思うのですが、どうしたら克服できますか?
別に克服する必要はないような気がしますけどね。最初は水シャワーを浴びてから、徐々に体を慣らしていけばいいのではないでしょうか。
とりあえず入ってみたら分かるからと、無理矢理入らせるのも違うような気がします。
サウナ室の中では、足が一番温まりづらいのに、水風呂は足から入るので冷たく感じるんです。ですので、足先まできっちり温めると、ああ、いけるかもという気になるかもしれないですね。足は、センサーなんです。
加藤式・サウナの入り方
1. サウナ
2. 水風呂
3. 外気浴
夏場におけるサウナの入り方を教えてください。
逆サウナです(笑)。私は、最初、水風呂から入ります。それが嫌な人は、水シャワーで最初に冷やしてからのほうがいいですね。
夏は、サウナと水風呂の関係性が逆になるんですね。最初から暑いと、体が温まらない内にサウナ室から出ちゃうということがあるので、夏は先に冷やすほうがいいです。
逆サウナということは、サウナ室を出たあとに、外気浴をすれば〝ととのう〞っていうことですか?
いえ、サウナ室を出たあとは、水風呂に入ります。水風呂に入って、サウナに入って、もう一回水風呂に入って、外気浴という流れです。
最初から暑いと、すぐ出ちゃって意外と温まらない内にすぐ出ちゃうということがあるので。まあ最初は、夏は冷やすほうがいいかもしれないですよね。
最後になりますが、〝ととのう〞ことにあんまりピンと来ないって人にアドバイスをいただけますか。
先ほど申し上げた、サウナの正しい入り方を一回試してほしいということと、すごく嫌なことがあったときにサウナを試してみてください。
元気なときに行ってもあまりととのわないかもしれないですが、たとえば、辛いことがあったときとか、体力的に辛いときなどにリカバーに行ってみてください。そのほうがととのいやすいと思います。
かとう やすたか
慶應義塾大学医学部特任助教
日本サウナ学会代表理事
北海道大学医学部医学科を経て、同大学院(病理学分野専攻)で医学博士号取得(テーマは脳腫瘍)。
北海道大学医学部特任助教として勤務したのち渡米。ハーバード大学医学部附属病院腫瘍センターにて膵臓癌研究に従事。
帰国後、慶應義塾大学医学部腫瘍センターや北斗病院など複数の病院に勤務。
専門はすい臓がんを中心にした癌全般と神経変性疾患の病理診断。
サウナをはじめとする世界中の健康習慣を最新の科学で解析することを第二の専門としている。
サウナを科学し発信していく団体「日本サウナ学会」を友人医師、サウナ仲間と作り、代表として活動中。
著書に『医者が教えるサウナの教科書』(ダイヤモンド社)、『医者が教える究極にととのうサウナ サウナ大全』(ダイヤモンド社)がある。