スゴイサウナ赤坂店は本当にすごかった！

ひどい花粉症のせいだろう。
３月下旬～４月頭にかけて、仕事にも趣味にも高い意欲を保てなくなっていた。

薬を飲めば眠くなるし、飲まなければ涙、くしゃみ、鼻水でどうにもならない。

だが、僕も大人だ。自分の機嫌の取り方くらいは知っている。

サウナでたっぷりと汗をかき、水風呂で冷やし、横になってボーっとする。

これを三度も繰り返せば、瑞々しい若竹のような芯が体の真ん中にピンと立つ。これで即復活だ。

訪れるサウナは、すでに決定済みだった。
4月6日に、新しくオープンした「スゴイサウナ赤坂店」。
こちら、マグマスパ式サウナのアンバサダーを務める、“ サウナの鉄人 ” 改め “ 温めの鉄人 ”が監修しているので、その期待度は高い。

こちらへオジサンばかりのサウナ仲間8人で向かう。

赤坂見附駅から徒歩５分程度の好立地で、「凄位桑拿（スゴイサウナと読む）」と大きく書かれた黄色い幕が目印。

その脇にはタレントのヒロミ氏やavex会長、松浦勝人氏などから花も届いており、道行く人々が思わず歩みを止める華々しいサウナだ。

今回、本業のかたわらサウナのコンサルティングなども手がける某氏に、開店直前のレセプションへの参加という形で招待していただいたのだ。ありがとうございます！

明るく元気な笑顔で迎えてくれたスタッフさんから無料貸し出しの水着を受け取り、脱衣所で着替えたら、ととのいスペースを抜けて、浴場へ。

浴場には、サウナ室、水風呂、４つシャワーがあり、嬉しいのが、温浴風呂もあるということ。

休憩用にととのいスペースと浴場を合わせて、計８つのリクライニングチェアがある。

シャワーで体を清めたらいよいよサウナヘ。

温度は65℃と低めだが、わっと熱気が来る十分な温かさ。
60％の湿度に加え、天然溶岩で設えた壁が水蒸気で熱せられて発生する輻射熱の効果もあり、すぐさま全身に玉のような汗が浮かび上がる。

体の芯から温まっていくのが感じられて、実に気持ちが良い。

入った瞬間に目玉や唇がヒリヒリと灼けつく超高温のサウナを激辛担々麺とするなら、こちらはココナッツミルクが香る甘辛のタイカレー。まろやかな熱が心地良い。

オートロウリュは10分に1回。ストーブが2基あるので、瞬間的に室内全体を亜熱帯空間にしてくれる。

ストーブの脇の床には枕が2つ置いてある。

つまり、寝転がって良いということで、サウナと同じくらい岩盤浴が好きな僕にとってかなり嬉しい。

デッドスペースをうまく活用したこの試みが広まっていくことを、個人的には願うばかりだ。

もうひとつ嬉しかったことがある。

ここスゴイサウナ赤坂店ではおしゃべりがOKなのだ。

昨今のサウナブームはコロナ禍に盛り上がったこともあり、「黙浴」がスタンダードとなっている。

かつてはオジサンたちが仕事やプロ野球について嬉しそうにボヤいていた昭和レガシーなサウナですら、私語厳禁となっているところは多くある。

一方で、古き良き銭湯（湯治場）のテイストを現代に持ち込むことをコンセプトにしているこのサウナでは、客同士の会話を禁じていない。

もちろん、他人の迷惑になる大声や話題はご法度だが、マナーを守ってするおしゃべりはやはり楽しい。
お互いに裸だから素直になれるし、何より体が温かくて気持ち良いので自然と話はポジティブな方向へと進んでいく。

知らない人から話しかけられても、サウナの爽快さのおかげで明るく対応できる。

江戸時代の湯屋がそうであったように、今はサウナが最高にイカした社交場であることを再認識させてくれる。

水風呂の温度は16℃。65℃のサウナを出た後には冷たすぎない丁度良い温度で、ひんやりとした膜が全身を包むように優しく冷やしてくれる。

水風呂でシャキッとした後は、お待ちかねのととのいタイム。

リクライニングチェアのすぐ近くには、ポカリスエットなどのフリードリンク。
これを一杯引っかけたら、オジサンらしく「くぅ～ッ」と呻いてイスに身を横たえる。

目を閉じれば、聞こえてくるのはサウナ室からの話し声。
ときに笑い声も耳に届き、タオルで覆っている僕の顔は自然と口角が上がる。

ああ、そうなのだ。
僕たちはこういう素敵な時間を過ごすために生きているのだ。

満員電車で他者と争い、SNSで彼我を比較し、周りの成功を妬んでみたり焦ってみたり……。

そんな嫌な部分をきれいさっぱり流して、優しくておおらかな自分に戻してくれる。

だから、サウナは最高なんだ。

さて、僕が会話OKのサウナだけが好きなのかといえば、そんなこともない。

瞑想のごとく自分と向き合う黙浴もしっかり好きなのだ。

おしゃべりと黙浴、どちらが良いとか上だとかはない。

それはサウナの温度や水風呂の冷たさ、整いイスの種類などにも言えること。

そのときの気分に合うサウナへ行き、そこで思い思いに楽しめば良いだけなのだ。

すっかりととのいまくった僕たちオジサングループは、赤坂のテラスで優雅にお茶した後、サウナーおなじみのあの店で生姜焼きを食べ、そして解散した。

当初の予定ではこの後、映画『オッペンハイマー』を見に行くつもりだったが、なしにした。

相性の良いサウナをたっぷり楽しみ、仲間と語らい、美味いメシを食べる。

身も心も茹でたてのジャガイモのようにホクホク状態で、上映中に高いびきで爆睡してしまいそうだったからだ。

いくらなんでも、映画は黙浴に限る。

取材・文／ホク山ホク