若きサウナ実業家が手がけた
銭湯をリニューアルした
こだわりのサウナ空間
若きサウナー実業家が銭湯を改装
3月下旬、神奈川県・相模原の「しずの湯」を訪れた。
銭湯を大胆にリニューアルしたサウナということで、かなり話題になっているサウナだ。
迎えてくれたのは、「しずの湯」の運営責任者である株式会社yueの代表・大澤秀征さんだ。
子どものころからサウナに親しんできた「根っからのサウナー」である大澤さん。
千葉大学工学部都市工学学科への進学を機に上京。
そこからサウナへの熱はさらに高まったという。
2023年には株式会社yueを設立。
これまで多くのサウナを手がけてきた。
写真で見る限り、オシャレな髪型の若手起業家という印象だったが、この日会ったご本人は、少し髪の伸びた坊主頭だった。
「オープン日に間に合わなかったので、みそぎの意味で坊主にしたんです」と、笑う。
2022年には、三田の名店「PARADISE」を開業。館長兼店舗責任者として、しっかりとキャリアを積んできた。
そして、満を持してオープンしたのが、この「しずの湯」である。
元々の姿は、創業から57年にわたって地域に愛されてきた「亀の湯」。
その歴史ある銭湯を、サウナ施設としてリニューアルした形だ。
『Makuake』のプロジェクトにも参加し、目標金額100万円を大幅に超える330万円を集めた。
サポーターから「とても質の良いサウナ!」「最高!」といった応援メッセージも多数届く、いま注目の施設でもある。
若手でありながら本気でサウナを愛する男が手がけた「しずの湯」は、果たしてどんなサウナなのか。

細部までこだわったサウナ室
サウナ室は3段構造。
サ室に入ると、もわっと強めのスチームが心地良い。
ストーブはフィンランドの人気メーカーSAWO社を使用。
2機並んだツインストーブで、20分ごとのオートロウリュとなっている。


初心者はストーブから離れた下段に、サウナ上級者は最上段に座ることで、それぞれ快適な熱さで過ごせるように配慮されている。
座面の奥行は段ごとに異なっており、座り心地にも気を配った設計だ。
天井はやや低めのつくりだが、最上段だけは天井が高くなっており、熱をしっかりと閉じ込める構造になっている。
深いサウナ愛を持つオーナーさんが作った施設は、やはり違う。
一目瞭然で、まるで違うのだ。
細かな気配りがされているというか、押さえている所は必ず押さえているというか。
やや抽象的かもしれないが、「魂がこもっている」と思わせてくれるのだ。

「しずの湯」の営業は13時から。
この日も開店直後からお客さんが入りはじめた。
常連客もすでについているようで、春休み中ということもあってか、学生さんふうの若者も多い。
この日は、大澤さん自身もサウナに入り、一緒に楽しませてもらった。
天井の高さへのこだわりや、細部の設計意図なども、気さくになんでも教えてくれる。
「まだまだミスも多いですけどね」と笑う彼だが、その試行錯誤を繰り返す姿勢こそが、「しずの湯」をさらに進化させていくのだろう。
サウナに完成はない。
日々、改善の連続なのだ。
サウナを家のお風呂の代わりにしたい
若い客の一人が、大澤さんにさまざまな質問を投げかける。
サウナの楽しみ方にとどまらず、施設づくりや運営にまで踏み込んだ内容も多い。
それに対して、大澤さんは丁寧に、率直に答えていく。
その若いお客さんからは少し年上にあたるものの、自分たちと大きく変わらない世代の人が、こうしてサウナビジネスに本気で取り組んでいる。
その姿は、未来の成功を夢見る若者たち——とりわけ若きサウナーたちにとって、大きな刺激になっているようだ。
水風呂には、地下水を汲み上げた天然水を使用。
肌ざわりがやさしく、火照った体をやわらかくクールダウンしてくれる。

そのあと、ととのい椅子に身を委ねて目を閉じると、静かな幸福感に包まれる。
元が銭湯だった建物だけに、天井が高く開放感がある。
ぽつ——、ぽつ——。
落ちる水滴の音が、清らかに響く。
人々の話し声も、どこか柔らかく反響しながら、やさしく耳に届く。
筆者の脳裏に浮かんだのは、幼いころ通っていたキリスト教系の保育園。
教会に似た静けさと高い天井。
うっとりと心がほどけていったのは、そんな過去の思い出と、銭湯という空間が持つ郷愁が、絶妙に重なったからかもしれない。



サウナ取材を終えたあと、近所の中華料理店で、大澤さんおすすめの餃子を一緒にいただいた。
「ゆくゆくは、“しずの湯”のようなサウナを、家のお風呂の代わりにしたいと思っているんですよ」
笑顔で語るその目には、気負いも迷いもない。
ブームに乗るのではなく、自分が本当に好きなものを信じて、広めたい——その思いの強さが、全身からにじみ出る。
ピュアでスケールの大きい夢を抱く男が作ったサウナ「しずの湯」。
本当のサウナ愛にふれたいなら、ぜひ訪れてみてほしい。


うなべえ ‘s comment
サウナを愛する熱き若人を
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