いま、サウナの進化がとんでもないことになっている。
年を重ねるごとに新たな仕掛けのサウナが次々と誕生。
一等地や大箱のサウナも増え、競争は激化するばかりだ。
それはきっと、多くのサウナーが感じていたことだろう。
サウナ大戦争は、さらに苛烈さを増していくのか?
それとも、別のベクトルへと進むのか。
そのひとつの答えになるかもしれないサウナが、2026年5月にオープンした「サウナバグ」である。
物語に没入する
イマーシブサウナ
愛知県豊田市。
国道から少し入った場所に、サウナバグはあった。
階段を登り、ドアを開ける。
入り口上にはチカチカと点滅を繰り返す蛍光灯風のライト、真っ赤な照明に、ラジカセから流れるのは音割れした音楽。
ポストアポカリプス作品に出てくる、抵抗勢力の隠れ家のような世界観だ。
総合プロデュースを担ったのは、おなじみmadsaunistである。

フロントには、レトロなモニターとラジカセ。このラジカセから、荒廃した世界の音楽が流れてくる。
「Sauna Base SHIFUKUに続く新店舗を出すにあたり、師匠であるmadsaunistさんに相談したんです。そして、UKさんが長年温めてきた構想を実現させたのが、スチームパンクとサイバーパンクの世界観を持つこのサウナでした」
こちらのファンビジョンは、世界の様々な言語で「ようこそ」と歓迎してくれる。
そう語るのは、SAUNA BUGのオーナーである船屋隼さんだ。
川崎重工という超大手企業を退社し、サウナで生きていくことを決めた彼もまた、madsaunistの面々と同様のサウナ狂人である。
この日のプレオープンイベントには、madsaunistから総合演出のUKさんと戦略コンサルタントのYASさんも来ていた。
「SAUNA BUGはストーリーから入ったサウナです。荒廃した世界でサウナというオアシスを作ったらどのようになるのか?そのイメージを表現したのが、SAUNA BUGなんです」(UKさん)
ストーリーから構築したサウナとは、さすがはmadsaunist。
新しいことを次々と見せてくれる。
こちらのサウナはユーザーがその世界観に没入することから、「イマーシブサウナ」と呼ばれる。では、さっそく「没入」させていただこう!

SFの世界を構築した
刺激的な異空間
浴室のドアを開ける。
極彩色のネオンが瞬く。
水音が響く。
天井や壁にはパイプが血管のように張り巡らされている異質な空間だ。

アニメでいえば「AKIRA」や「攻殻機動隊」、映画でいえば「鉄男」の世界観を彷彿とさせる。
「男の子って、こういうの好きやろ」
ニヤリと笑うUKさん。
まさしく、記者の大好物である。
きっと多くの男子たちも、自分の部屋をこんな空間にしたいと一度は思ったことがあるだろう。
水風呂やシャワーはピカピカに光る金属製。聞けば、初代iPhoneの研磨も手がけた超一流の職人さんが、水風呂やスチームジェネレーターの研磨を手がけたという。
水風呂の浴槽ひとつにも、徹底的にこだわるmadsaunistはやはり狂っているし、バグっている。


サイバーパンクとスチームパンクが交錯する世界観。男の子のロマンを体現しつつ、一流の職人が丁寧に仕上げるこだわりはさすが。
他にも畳敷で寝そべられるスペースに、温かいお風呂も完備。
見た目だけでなく実用性にもぬかりはない。
だが、特筆すべきは、やはりデザインだ。
コンセプトは、追い詰められた人類が束の間の休息を楽しむ閉鎖空間。
どこからともなく「外界の音」が聞こえてくる演出も憎い。
この部屋を一歩出れば、すぐさま機械兵に襲われてしまうかもしれない——そんな妄想が頭をよぎるのだ。
いつの間にかストーリーの中にいたことにほくそ笑みながら、いよいよサウナへと足を踏み入れる。

キンキンに冷えた氷水で
瞬間冷却するバグクナイプ
サ室は30人ほどが入れる広さ。
奥には日本最大級の薪ストーブがドンと構えている。
さながら鉄と石でできた心臓のようだ。


日本最大クラスの薪ストーブ。スチームジェネレーターはもちろんだが、注目ポイントはストーブの金属部分に走るかすかな横縞の加工。初代iPhoneを手がけた職人さんが施した匠の技術で、スチームジェネレーターそのものをアートへと昇華させた。
真っ赤に燃え上がる薪。
少しも息苦しくないのは、1%の精度で吸気と排気をコントロールしているからである。
サ室のセッティングは、もはや語るまでもなく最高だ。
蒸気を発生させるスチームジェネレーターのおかげで湿度は高く保たれて、すぐに汗が噴き出てくる。

いよいよ熱くなってきた。
いつもなら水風呂へ行くところだが、ここではクナイプを楽しめる。

クナイプ用の水が入ったドラム缶は、冷たさを保てるよう二重構造になっている。ライトアップされて乳白色に見えるのは、この荒廃した世界において貴重な水源であることをイメージしているそう

クナイプの説明はUKさんのXを参照ざんす~
記者の手元には、氷がたっぷりと入った手桶がすでに用意されている。
サウナに入る前に、入口前の製氷機から持ってきたものである。
サ室内には乳白色にぼうっと光るドラム缶があり、そこに氷入り桶を突っ込んで水を汲み上げる。
そして、氷水を頭からかぶる。
火照った全身を瞬間冷却する、名物の「バグクナイプ」だ。
このとき、ザバーっと一気にかけてしまうのも豪快で楽しいが、ゆっくりかけるのもオツなものだ。
脳天からからチロチロ垂らすことで、長く楽しむことができる。
どちらが気持ちいいかは、その人次第だろう。
いずれにせよ、いい年したおじさんが「うおぉぉぉ!」と吠えまくるくらい最高なのだ。

クナイプが終わると、しばしのあいだ放心状態になる気持ち良さなのだ
一瞬で体はクールダウンするが、またすぐに薪ストーブの火力で全身が火照り、汗が噴出する。
そして再びのバグクナイプ!
……ヤバい。
この繰り返しで、何時間でもいられてしまう。
さらに「BUGアイシング」という、強烈な体験もできる。
現役医師であるmadsaunist YsK氏が開発した顔面冷却メソッド「V2 FACE ICING」をベースに、独自の冷却プロトコル「BUGアイシング」を導入したもの。
オーナーの船屋さんは、熱く語る。
冷却は、感覚ではなく入力です。
サウナと水風呂で高まった交感神経の興奮を、神経生理学的に反転させる。
それが「BUGアイシング」の設計思想であり、ただ身体を冷やすこととは根本的に異なるアプローチです。
狙うのは、顔面のV2領域=三叉神経第二枝(上顎神経)周辺。
ここをピンポイントで冷却することで迷走神経が活性化し、心拍は下がり、血圧は安定し、筋緊張が解けていく。
顔面冷却の研究でも、約0℃の氷水バッグで額・眼周囲・頬を冷却した際に、心拍数の低下や副交感神経活動の変化が報告されています
出典=「Schlader et al., 2018; Khurana et al., 1980」
ポイントは、ただ冷たいタオルを当てることではありません。
よく絞ったタオルで氷を包み、頬・鼻翼周囲・眼窩下にしっかり密着させることで、V2領域に十分な冷刺激を入れていく。
氷は少量で十分。多すぎると痛覚刺激となり、逆に交感神経が優位に戻ってしまいます。タオルはよく冷やし、しっかり絞ったうえで、耳の後ろから後頭部へ巻くと安定します。
交感神経から副交感神経へ、効率的に切り替わることで、没入感のあるととのい体験が立ち上がっていきます。
SAUNA BUGでは、浴槽内のクラッシュアイスを自由に使うことができます。
他施設のシングル水風呂でも、冷タオルひとつで試すことは可能です。
この冷却の入力を一度知ると、もう以前と同じ感覚で外気浴に向き合えなくなるかもしれません!
百聞は一見に如かず。
ぜひ、自身で衝撃体験を味わってほしい!



禁断のループから脱出して、水風呂へ。
それから、内気浴スペースでまったりとリラックス。


こちらの内気浴スペースは、またの名を「培養室」。この世界において人間は培養される側という意味なのか、はたまた別の解釈があるのか。そのあたりを考えるのも、SAUNA BUGの面白さなのだ。
ああ、気持ちいい。
だけど、いつもの気持ちいいとは少し違うのだ。
……わかった。
空っぽになることではなく、思考する気持ちよさなのだ。
私は身を横たえながら、「SAUNA BUGが“実在”する世界はどのようなものなのだろう」と、想像の翼を広げてみる。
こちらは「窓」をイメージ。つまり、SAUNA BUGの外側はこのようになっているということだ。無秩序に増築されたビル。派手なネオン。そこに人間はいない。
「銃夢」や「BLAME!」といった、往年の名作SFが頭に浮かぶ。
機械と人間が共存する世界に、想いを馳せる。
サウナでは、無になることが良いものとされてきて、私もそうだと思っていた。
でも、今の自分は違うのだ。
己の無軌道な思考に揺蕩うこと。
それが今日の私にとっては、もっともリラックスできる時間であったようだ。
この気づきは、どうしてもたらされたのだろうか。
頭の中にバグが発生したからかもしれない。
反対に、頭のバグがすべて取り除かれたおかげかもしれない。
答えは出してもいいし、出さなくてもいいだろう。

デジタルアートの中で「畳で寝る」というギャップが楽しいし、シンプルに気持ちいい
どうにも私たちは、答えを出そうとしすぎている。
サウナにしてもそうだ。
大きいから良い。小さいからダメ。
新しいから良い。古いからダメ。
おしゃれだから良い。ダサいからダメ。
高級だから良い。お金をかけてないからダメ。
断罪するかのごとき選別には、なんの意味もない。
味わいもない。何より世界が広がらない。

madsaunistの戦略担当YASさんは言う。
「このサウナは賛否が出るでしょう。ですが、その賛否の先にこそ新しい価値が出ると思っています。なぜ賛否が出るかといえば、ラグジュアリーかチープかという従来の評価軸にいないからです。そちらを縦軸とするならば、SAUNA BUGは横軸。アート性のあるコンセプトや、関わる人間の愛や熱量に価値を置いています」
極めてデジタル的なデザインを施しながら、アナログなサウナ愛をこれでもかとぶつけてくるSAUNA BUG。
「たかだか熱い箱と水の入った箱」に、本気で向き合う者たち。
その狂おしいほどの偏愛は、あなたの脳、心、体、そして人生をもバグらせてしまうかもしれない。




うなべえ ‘s comment
バグりちらかすざんす〜

SAUNA BUG
【総合プロデュース】madsaunist
【住所】愛知県豊田市陣中町2-4-7
【利用】男性専用施設
※レディースデイを定期開催予定
【営業時間】
平日 12:00〜24:00
土日 10:00〜24:00
【料金】
[平日]
60分 1200円
90分 1500円
120分 1800円
※以降、30分延長につき300円
[土日祝]
60分 1400円
90分 1800円
120分 2200円
※以降、30分延長につき400円





