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サウナを科学する! 第1回

医者が教える“ととのう”の正体とサウナの効果#01

医者が教える
〝ととのう〞の正体とサウナの効果

空前のサウナ・ブームの昨今。

医者の立場からサウナを科学し、発信している加藤容崇氏に、サウナの健康的効果、〝ととのった〞とき、人の体はどんな状態になっているのか?
どのような入り方が〝ととのい〞やすいのか? 
など、医師ならではサウナに関する見解を伺う集中連載。

第1回は、加藤氏とサウナの出会い、効果についての話。

サウナは好きだったんですが、サウナ室に入って、水風呂に入らず、シャワーを浴びて、そのまま出て、ちょっと汗をかいて満足! そんな入り方をしていました。

あるとき、渋谷のコミュニティー・ラジオの番組で、サウナをテーマにした放送があり、私が「人間のメカニズム」の専門家として、「一般的な医学の話にサウナを掛け合わせて、何かコメントしてくれないか?」と言われて出演したんです。

当時、私はまだ、サウナに対して科学的な気持ちがまったくない状態でした。

そもそも温冷交代浴すら知らず、水風呂に対して我慢して歯を食いしばって入るイメージでした。そこで出演者たちに「水風呂って拷問のようで意味がわからないです」みたいな話を放送前にしましたら、「いやいや、そんなことはない」と凄く力説されまして……。

サウナ好きの人って「ととのう」って意味のわからないことを言うじゃないですか(笑)。

私は研究者なので、疑うんですよ。胡散臭い感じするじゃないですか、「昇天する」なんて、怪しい表現ですし。サウナなんて風呂に毛が生えたくらいのもんでしょと思っていたんですね。
 
ラジオの収録中は、真面目に「医学的にそれは……」とか「自律神経が……」なんて言いましたけど、収録が終わった後に「話を盛りすぎじゃないんですか? 嘘なんじゃないですか?」みたいなことを伝えましたら、「わかった」と、その場でTTNEという団体のおふたり、松尾大さんと秋山大輔さんにサウナに連れていかれました。

加藤氏をサウナの道へ導いたTTNEの松尾大氏(左)と秋山大輔氏(右)

彼らに教えられた正しい方法でサウナに入ったら、自分が想定していなかった感覚を体験することができたんです。

「あれ? これ研究したら、面白い結果で出そうですね」と伝えたら、彼らも自分たちが胡散臭く映っていることはわかっていたらしく、いくら「サウナはいい!」と声を上げても、説得力がないと感じていたようでした(笑)。

「ちゃんと研究して、客観的なデータを取っていかないと、色々な人たちに届くようなメッセージにはならない」とおふたりもおっしゃってまして、「なら、研究しましょう」ということになり、私のサウナ研究が始まりました。

健康効果がとても大きいですね。サウナって学術的な論文を調べると、ちゃんとした効果はちゃんと立証されているのにもかかわらず、フェイクの情報が混ざっているんですよね。だからその健康効果っていうのがあるのに、みんながちゃんと意識できなくなっているんです。

photo / Shutterstock

むろんあります。ただフィンランドの場合は、サウナは健康習慣なので、日本のお風呂と一緒なんです。

お風呂って健康にいいじゃないですか。リラックス効果や自律神経が整うとか……まあそれと似たような感じですね。特別、医学的、科学的な視点ではなく、伝統的な健康習慣の一部という感じです。

健康効果を検証するには比較対象が必要になります。この習慣がある人は長生きで、ない人は短命などです。ですが、フィンランドでは、みんなサウナに入るので、差がないんですね。

ところが他国の人と比較したときに、「あれ? フィンランド、この病気、少ないじゃない!?」ということになるんですよ。

「太っている人が多いのに心筋梗塞が少ないですね。認知症や精神疾患も6割から7割ぐらいリスクが少ないです」

実はそういうリスクが減るという論文が結構、出ています。


次回に続く


かとう やすたか


慶應義塾大学医学部特任助教
日本サウナ学会代表理事

北海道大学医学部医学科を経て、同大学院(病理学分野専攻)で医学博士号取得(テーマは脳腫瘍)。
北海道大学医学部特任助教として勤務したのち渡米。ハーバード大学医学部附属病院腫瘍センターにて膵臓癌研究に従事。

帰国後、慶應義塾大学医学部腫瘍センターや北斗病院など複数の病院に勤務。
専門はすい臓がんを中心にした癌全般と神経変性疾患の病理診断。

サウナをはじめとする世界中の健康習慣を最新の科学で解析することを第二の専門としている。
サウナを科学し発信していく団体「日本サウナ学会」を友人医師、サウナ仲間と作り、代表として活動中。

著書に『医者が教えるサウナの教科書』(ダイヤモンド社)、『医者が教える究極にととのうサウナ サウナ大全』(ダイヤモンド社)がある。